
弁護士 伊﨑 翔
奈良弁護士会
この記事の執筆者:弁護士 伊﨑 翔
近畿圏内の地方裁判所や家庭裁判所で裁判所事務官・裁判所書記官として勤務。在職中に予備試験及び司法試験に合格し、弁護士となる。家庭裁判所での経験を活かし、相続等の家事事件を取り扱っている。
遺言は、ご自身の最終的な想いを明確に示し、遺されたご家族が安心して相続手続を進めるために欠かせないものです。遺言があることで、相続を巡る不要な争いを防ぎ、故人の意思を尊重した形で円満な相続が実現しやすくなります。
今回は、遺言の方式のうち多く利用される「自筆証書遺言」と「公正証書遺言」について、その特徴やメリット・デメリットを、弁護士の視点からご説明いたします。
自筆証書遺言
自筆証書遺言は、遺言者ご本人が全文・日付・署名を自ら書き、押印することで作成できる遺言です。費用がかからず、思い立った時に作成可能であるため、一般の方にも利用しやすい方式といえますが、要件の不備による無効や紛失・改ざんの危険性、亡くなられた後に家庭裁判所での「検認」という手続が必要になるなどの課題がありました。
しかし、令和2年(2020年)に導入された「自筆証書遺言書保管制度」によって、法務局で自筆証書遺言を保管できるようになり、上記リスクや手間は大幅に軽減されました。
公正証書遺言
公正証書遺言は、公証人が関与し、公証役場で作成する遺言です。奈良県内にも奈良市及び大和高田市に公証役場があり、多くの方々に利用されています。
その特徴は以下のとおりであり、公証人に対する手数料等はかかるものの、安心感と確実性の点では最も優れた方式といえるでしょう。
- 無効リスクが低くなる:公証人が作成するため、要件の不備による無効化を防げます。
- 検認不要:家庭裁判所での検認手続を経ず、すぐに遺言を執行可能です。
- 保管の安全性:原本は公証役場に保管され、紛失や改ざんの心配がありません。
- 遺言能力の確認:公証人が遺言者の遺言能力を直接確認するため、遺言能力に関する争いを未然に防げます。
- 柔軟な対応:公証役場は、奈良県内の病院やご自宅への出張にも対応しており、高齢の方や体が不自由な方でも安心して作成可能です。
どちらを選ぶべきか
自筆証書遺言は手軽で費用もほとんどかかりませんが、要件を満たさない場合に無効となるリスクがあり、注意が必要です。一方、公正証書遺言は費用がかかるものの、要件を欠いた場合の無効リスクがなく、かつ、相続による争いを防ぐ効果が高いのが大きな特徴です。
まとめ
遺言は「大切な想いをご家族に確実に託すための手段」であり、ご家族の平穏を守るためにも重要です。
自筆証書遺言は手軽に作成できますが、内容が複雑な場合や相続人間での紛争が懸念される場合には、公証人が関与する公正証書遺言がより安心できる選択肢となります。
当事務所の弁護士は、奈良で生活する方々の状況やご家族の関係性に応じて、最適な遺言の方法をご提案いたします。安心して未来を託せるよう、まずはお気軽にご相談ください。