
弁護士 伊﨑 翔
奈良弁護士会
この記事の執筆者:弁護士 伊﨑 翔
近畿圏内の地方裁判所や家庭裁判所で裁判所事務官・裁判所書記官として勤務。在職中に予備試験及び司法試験に合格し、弁護士となる。家庭裁判所での経験を活かし、相続等の家事事件を取り扱っている。
せっかくご自身の思いを込めて遺言書を作っても、「本当にその内容が守られるのだろうか」と不安になることはありませんか。また、遺言がきっかけで相続人の間にトラブルが起きないか、心配される方も少なくありません。
そんなときに、遺言を遺した方の意思をスムーズに、そして確実に形にしていくために大切な役割を果たすのが 「遺言執行者」 です。
本コラムでは、遺言執行者の役割や権限等についてご説明いたします。
遺言執行者の役割
遺言執行者とは、被相続人(亡くなられた方)が遺した遺言を実現するため、手続を進める人を指します。
その職務には、相続財産の目録を作成した上で相続人に交付することや不動産の名義変更、預貯金の解約・払戻しなど、多岐にわたる手続が含まれます。
遺言執行者が選任されていることで、遺言に基づいた相続を着実に進めることができ、相続人間の紛争を未然に防ぐ効果も期待できます。
誰が遺言執行者になれるのか
遺言執行者は、遺言であらかじめ指名されることがほとんどですが、指名がない場合には、利害関係人(相続人や受遺者など)の申立てに基づき家庭裁判所が選任することも可能です。
未成年者や破産者でなければ、相続人も遺言執行者になることが可能です(民法1009条)。ただし、実務上は専門的知識や法的判断が求められ、かつ、相続人間で不平等な内容の遺言である場合にはトラブルになることもあるため、遺言執行者を弁護士に依頼されるケースが少なくありません。専門家が就任することで、複雑な手続も迅速かつ適正に進めることができます。
遺言執行者の権限
遺言執行者は、遺言を確実に実現するため、遺言の執行に必要な一切の行為をする権限を有しています(民法1012条1項)。
この権限は、遺言の内容を実現するために必要な範囲に限定されますが、その範囲内であれば、遺言執行者は相続人の協力を得ることなく、単独で各種の手続を進めることが可能です。例えば、預貯金の解約・払戻し、不動産の名義変更など、相続に関する重要な手続を単独で行うことができます。
なお、遺言執行者がその権限に基づいて行った行為は、相続人全員に直接効力が及びます(民法1015条)。つまり、相続人の一部が手続を妨げるような場合であっても、遺言執行者の判断により、遺言を実現することが可能となるのです。
弁護士に依頼するメリット
遺言執行は、専門的知識と公正な立場から冷静に進める必要があります。相続においては、相続人の利害が対立することも少なくなく、そのような場合に中立的な弁護士が遺言執行者となることで、手続が円滑に進むだけでなく、無用なトラブルを回避することができます。
また、遺言の作成段階から弁護士にご相談いただければ、誰に遺言執行者を任せるべきかについても適切なアドバイスを受けられ、より安心して相続に備えることができます。
まとめ
遺言執行者は、被相続人の遺志を守り、ご家族が安心して相続を進められるよう支える重要な存在です。
遺言執行者を誰に任せるかを生前に検討することは、相続において欠かせない視点といえるでしょう。
相続や遺言についてご不安がある方は、ぜひ一度、当事務所にご相談ください。経験豊富な弁護士が、円滑な相続の実現に向けて丁寧にサポートいたします。