弁護士 芳林 貴裕
奈良弁護士会
この記事の執筆者:弁護士 芳林 貴裕
奈良県出身。東大寺学園高校卒。京都大学法学部、同法科大学院を修了し、栃木県内の法律事務所にて約4年半の間勤務した後、地元・奈良に戻る。遺産分割、相続放棄、遺留分侵害額請求などの実務に幅広く従事している。
他の相続人が協力してくれず、相続税の申告期限が刻一刻と迫る状況は、精神的にも非常に大きな負担となります。「このままでは加算税などのペナルティを受けてしまうのでは?」という焦りから、誰に相談すべきか迷われている方も多いでしょう。
結論から申し上げますと、「相続人間で話し合いができない・協力が得られない」というトラブルが根底にある場合は、まず弁護士に相談することをお勧めします。
本稿では、なぜこのようなケースで弁護士が窓口となるべきなのか、そして税理士とはどのように連携していくべきなのかを解説します。
なぜ「非協力的な相続人」がいる場合に弁護士なのか
相続税の申告は、本来であれば全相続人が協力して財産を把握し、遺産分割協議を行って、その結果に基づいて申告書を提出するのが理想です。しかし、一部の相続人が無視をしたり、感情的な対立から協議に応じなかったりする場合、手続きはストップしてしまいます。
ここで弁護士が介入する最大のメリットは、「法的手続を前提とした交渉等」が可能になる点です。
代理人としての交渉
弁護士はあなたの代理人として、他の相続人へ正式な通知を送ります。親族からの連絡は無視できても、弁護士名義の書面が届くことで、相手が「放置すると法的手続き(調停や審判)に移行する」という危機感を持ち、話し合いに応じるケースが多々あります。
遺産分割調停の申し立て
話し合いがどうしても不可能な場合、家庭裁判所に遺産分割調停を申し立てることができます。これにより、裁判所を介した解決へと強制的に舵を切ることが可能です。
財産調査の代理
非協力的な相続人が遺産を隠している疑いがある場合、弁護士は弁護士照会(23条照会)などの手段を用いて調査できることがあります。
相続税申告における「弁護士」と「税理士」の役割分担
「弁護士に頼めば税金のこともすべて解決するのか」という点については、役割の分担を理解しておくことが重要です。
「揉め事を解決して遺産分割を確定させる」のが弁護士の仕事であり、「確定した内容に基づいて正確に税額を計算し、相続税申告する」のが税理士の仕事です。
もし期限までに話し合いがまとまらない場合でも、弁護士は「未分割申告(とりあえず法定相続分で申告しておく手続き)」を行うべきタイミングを判断し、その実務を提携する税理士と連携して進めていくことができます。
当事務所のスタンス
相続問題は「法律の争い」と「税金の申告」が表裏一体です。弁護士だけで無理にすべての税務処理を完結させようとすると、高度な節税スキームの検討が漏れてしまうリスクがあります。
逆に、税理士だけでは相続人間の深刻な紛争を法的に解決することはできません。
当事務所では、まずは、弁護士が代理人となり、非協力的な相続人との交渉や法的手続きを一手に引き受けます。
相続税の申告が必要なケースでは、当事務所に所属する弁護士が信頼している税理士をご紹介することが可能です。弁護士と税理士が密に連携することで、お客様がそれぞれの事務所に別々に説明する手間を省きます。
遺産分割の着地点を「税額がいくらになるか」という税理士のシミュレーションを見ながら検討します。これにより、紛争解決後の「手残り」を最大化することが可能です。
まとめ
他の相続人が協力しない状況で、独力で相続税の申告期限(10ヶ月)に間に合わせることは非常に困難です。また、無理に進めようとして関係がさらに悪化し、解決が遠のくことも珍しくありません。
まずは、「話し合いを前に進めるための専門家」として弁護士を頼ってください。 私たちが法的なハードルを取り除き、必要に応じて税務のスペシャリストとバトンをつなぐことで、安心感を持って手続きを完了させることができます。



