弁護士 芳林 貴裕
奈良弁護士会
この記事の執筆者:弁護士 芳林 貴裕
奈良県出身。東大寺学園高校卒。京都大学法学部、同法科大学院を修了し、栃木県内の法律事務所にて約4年半の間勤務した後、地元・奈良に戻る。遺産分割、相続放棄、遺留分侵害額請求などの実務に幅広く従事している。
「実家の土地は長男が継ぐものだ」「うちは長男が親の面倒を見たから、遺産は全て長男のものになる」 親御さんが亡くなられた後、このような言葉に違和感やモヤモヤを抱えてはいませんか?
特に急逝された場合、悲しみのなかで直面する相続問題は、残された兄弟姉妹にとって大きな不安の種となります。「自分には権利がないのではないか」「長男の言う通りにするしかないのか」と思い悩む必要はありません。
現在の法律は、かつての「家督相続」のような慣習とは異なる明確なルールを定めています。本記事では、長男以外の相続人の方が知っておくべき「正当な権利」と、公平な相続を実現するための具体的な対処法を解説します。
目次
法律が定める「相続人の順位」と「法定相続分」
日本の民法において、「長男だから」「跡取りだから」という理由で特定の相続人を優遇する規定は存在しません。
法定相続人とその順位
ご兄弟・姉妹である皆さんは、配偶者と共に、民法上の「法定相続人」として平等な立場にあります。
| 相続人 | 順位 | 法定相続分 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 配偶者 | 常に相続人 | 常に一定割合を保持 | |
| 子 | 第1順位 | 子全員で1/2 | 人数に関わらず全員が平等 |
| 直系尊属(父母等) | 第2順位 | 全員で1/3 | 子がいない場合 |
| 兄弟姉妹 | 第3順位 | 全員で1/4 | 子も直系尊属もいない場合 |
長男もあなたも、法的には「平等」です
重要なのは、子の取り分(遺産の2分の1)は、「生まれた順番や性別に関係なく均等に分けられる」という点です。
例えば、相続人が「配偶者」と「子ども3人(長男・あなた・妹)」の場合:
- 配偶者: 1/2
- 子(3名):残りの1/2を3人で均等に分割→各1/6
つまり、長男もあなたも妹も、法的な権利は等しく6分の1ずつであり、長男が自動的に優遇されることはありません。
納得のいく相続のための3つのアクション
長男側から一方的な主張をされたとしても、安易に同意(捺印)する必要はありません。
Step 1:財産調査の徹底
まずは「何が、どこに、いくらあるのか」を把握しましょう。
- 預貯金:通帳の確認、金融機関への取引推移(過去10年分等)の照会。
- 不動産:名寄帳や固定資産評価証明書による確認。
- 負債:借入金や未払金など、マイナスの財産も調査。
Step 2:対等な立場での「遺産分割協議」
遺言書がない場合、相続人全員による話し合いが必要です。
- 主張の根拠:慣習や感情ではなく、あくまで「法定相続分」をベースに交渉します。
- 第三者の介入:話し合いが平行線の場合は、家庭裁判所での「遺産分割調停」も視野に入れます。
Step 3:弁護士等、専門家への相談
長男との関係性や、主張の強さに圧倒されてしまう場合は、早めに専門家へ相談してください。法的な根拠に基づいた交渉を代理で行うことで、精神的な負担を大幅に軽減できます。
権利は主張しなければ守られない
日本の法律は、長男以外の兄弟姉妹にも、親が遺した財産に対する明確な権利を保障しています。「長男だから」という言葉に妥協せず、正当な権利を知り、主張することが、結果として後腐れのない公平な相続へとつながります。



